ROE 8%を毎年超えられるか:5期の平均と標準偏差で「いつも高い会社」を探す

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伊藤レポートが示した ROE 8%の目安を、1年ではなく5期で確かめる式を紹介します。5期の ROE の平均と標準偏差を計算し、「平均 − 標準偏差」で下振れしても残る資本の効率や、8%を超えた年数で資本効率の確かさを測る方法を解説します。

ROE 8%超えは、その年だけの結果ではありませんか

  • 毎年のように ROE 8%を超えている会社はどこか
  • 平均は高くても、年によって大きくぶれていないか
  • 調子の悪い年でも、ROE はどのくらい残るのか
  • 自社の ROE の目標は、過去の実績から見て現実的か

2014年に経済産業省のプロジェクトがまとめた「伊藤レポート」は、日本企業に「最低でも8%を上回る ROE」を目指すよう求めました。それ以来、ROE 8%は上場会社の資本の効率を測る代表的な目安になり、中期経営計画の目標にも広く使われています。

ただし、ある年の ROE が12%でも、翌年は4%ということもあります。ROE は、資産の売却益があった年は高く、減損のあった年は低く出るため、「8%を超えたか」は1年では判断できません。5期分の ROE を1社ずつ計算し、ぶれまで比べるとなると、手作業ではとても追いつきません。

5期の平均と標準偏差を計算すれば、「いつも高い会社」が見分けられます

考え方の要点は、5期の平均で ROE の水準を、標準偏差で年ごとのぶれの大きさを測ることです。両方を見て初めて、その会社の資本の効率が確かなものかを判断できます。利益率のぶれを標準偏差で測る基本の考え方は「利益の安定度を標準偏差で測る:5期の営業利益率のばらつきから安定企業を探す」で説明しています。こちらは、それを資本の効率と8%の目安に当てはめたものです。

5期の ROE の平均と標準偏差

ROE5年平均
ROE の5年平均(%)= 今期から4期前までの5期の「親会社株主に帰属する当期純利益 ÷ 自己資本」の平均 × 100
ROE標準偏差
ROE の標準偏差(ポイント)= 5期それぞれの「ROE − ROE の5年平均」を2乗して平均し、その平方根を取る

各年の ROE は、その期の期末の自己資本で割った簡易な計算です(期首と期末の平均で割る計算とは少しずれます)。標準偏差は、各年の ROE と5期の平均の差を2乗して平均し、その平方根を取ったもので、5期をそのまま全体とみなす母標準偏差(表計算ソフトの STDEV.P と同じ)です。標本の標準偏差(STDEV.S)より少し小さく出ます。式は長くなりますが、構造は「5年分の同じ形を並べる」だけです。

下振れしても残る ROE

下振れ後のROE
下振れ後の ROE(%)= ROE の5年平均 − ROE の標準偏差

平均から標準偏差を1つ分引いた値は、「調子の悪い年でもこのくらいは残る」という ROE の目安です。この値が8%を超えている会社は、ぶれを考えても資本の効率が高い会社と言えます。

計算例

ROE が直近から10%・12%・8%・14%・6%の会社は、5期の平均が10%です。平均との差は0・2・マイナス2・4・マイナス4で、2乗の平均は8、標準偏差は約2.8ポイントです。下振れ後の ROE は約7.2%で、平均は8%を超えていても、調子の悪い年には8%を割り込むことが分かります。

8%を超えた年数

5期のうち何年、ROE が8%を超えたかも数えておくと分かりやすくなります。

ROE8%超の年数
ROE 8%超の年数(0〜5)= 今期から4期前までの5期それぞれで「ROE が8%を超えていれば1、そうでなければ0」とし、5つを足し合わせる

読み方

  • 平均が高く、標準偏差が小さい:安定して資本を効率よく使っている会社
  • 平均は高いが、標準偏差が大きい:好調な年に引っ張られている。悪い年の理由を確かめる
  • 平均は低いが、直近は上がっている:改善の途中。ROE を「ROE を3つに分けて読む:デュポン分析の考え方」の考え方で分け、何が改善したかを確かめる

使い方の例

  • 投資家:下振れ後の ROE で並べ替え、資本の効率が確かな会社を候補にする。PBR の低い会社の中で ROE が上向いている会社を探すなら「PBR 1倍割れから抜け出しそうな会社を探す:ROE の3期の改善の勢いを測る」
  • 経営企画:自社と競合の ROE の平均と標準偏差を並べ、中期経営計画の ROE の目標が過去の実績から見て現実的かを確かめる
  • IR:ROE のぶれの理由(一時的な損益など)を説明する材料にする

注意点

  • 5期前までの値が無い会社は空欄になる
  • 自己資本が小さい会社や、債務超過に近い会社は、ROE が極端な値になる
  • 自己株式の取得で自己資本を減らすと、利益が同じでも ROE は上がる。純利益率や総資産回転率とあわせて見る
  • 親会社株主に帰属する当期純利益の値が無い年は0として扱われ、平均と標準偏差がゆがむ

企業データラボなら、「いつも ROE が高い会社」を全上場企業から探せます

企業データラボでは、過去の期の値を「[1]」〜「[4]」で参照し、5期分の値を並べた長い式もそのまま保存できます。式を一度作れば約3,700社に同じ定義で当てはまり、下振れ後の ROE で並べ替えたり、8%を超えた年数が5の会社だけに絞り込んだりできます。

自社と競合の ROE の平均と標準偏差を同じ表に並べれば、中期経営計画の目標を考える材料にもなります。決算のたびに計算し直されるので、1年の数字では見えない「資本の効率の確かさ」を毎期確かめられます。

5期の ROE の平均と標準偏差を全上場企業に当てはめて、「いつも ROE が8%を超える会社」を探してみませんか。

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