
利益の安定度を標準偏差で測る:5期の営業利益率のばらつきから安定企業を探す
企業データラボ
過去5期の営業利益率の平均と標準偏差をカスタム列で計算し、利益が安定している会社を見分ける式を紹介します。変動係数での比較や、「平均 − 標準偏差」で悪い年でも残る利益率を見る方法も解説します。
この会社の利益率は、いつもの水準なのか、たまたまなのか?見分けたくありませんか
- 毎年安定して利益を出せている会社はどこか
- 利益率の振れ幅は、競合と比べて大きいのか小さいのか
- 悪い年でも、どのくらいの利益率は残りそうか
利益率の高さだけでなく、その利益率がどれだけ安定しているかも、会社の質を表す大事な要素です。毎年10%前後を保つ会社と、5%と15%を行き来する会社では、平均が同じでも、将来の見通しの立てやすさがまったく違います。
ばらつきは、そもそも複数の年を並べないと測れません。会社ごとに5年分の利益率を書き出して標準偏差を計算するのは、数社なら表計算ソフトでもできますが、全上場企業で比べるとなると手作業では追いつきません。
5期の利益率の標準偏差で、その疑問に答えられます
統計でばらつきを表す「標準偏差」を、過去5期の営業利益率から計算します。手順は、5期の平均を出し、各年の平均からの離れ具合をならす、の2段階です。1年の利益率が高くても、それがいつもの水準なのかは、5期分を並べて初めて分かります。
ステップ1:5期の平均
ステップ2:標準偏差
標準偏差は、各年の値と平均の差を2乗して平均し、その平方根を取ったものです。先に平均を求めておき、それを使って計算します。
この式は、5期を「全体」とみなす母標準偏差です。表計算ソフトの STDEV.P と同じ値で、標本の標準偏差(STDEV.S)より少し小さくなります。単位は平均と同じ%(ポイント)です。標準偏差が1なら、利益率はおおむね平均の±1ポイントの範囲で動いていることを表します。
ステップ3:比べやすい形にする
利益率の高い会社ほど、ばらつきも大きくなりがちです。利益率の水準が違う会社どうしで比べるには、標準偏差を平均で割った「変動係数」を使います。
さらに、平均から標準偏差を引くと、「悪い年でもこのくらいは残る」という保守的な利益率の目安になります。高い利益率と安定の両方を1つの数字で見たいときに便利です。
計算例
営業利益率が5期で8%・10%・9%・11%・12%の会社では、平均は10%です。平均との差は −2・0・−1・1・2 で、2乗の平均は2、標準偏差はその平方根で約1.4ポイントになります。変動係数は0.14、悪い年でも残る利益率は約8.6%です。
読み方と使い方
- 変動係数が0.2以下:利益率がとても安定している。景気に左右されにくい事業を持つ会社が多い
- 変動係数が0.5以上:利益率の振れが大きい。景気や市況に敏感な会社
- 投資家:「悪い年でも残る利益率」で並べると、高くて安定した会社が上位に来る
- 経営企画:自社の利益の安定度を競合と比べ、事業の構成や価格の決め方を見直す材料にする
注意点
- 平均が0に近い会社や赤字の年がある会社は、変動係数が極端な値になる。平均がプラスの会社どうしで比べる
- 一時的な損益(減損など)があった年は、ばらつきが実態より大きく出る
- ばらつきが小さくても、利益率が少しずつ下がり続けている会社もある。推移の向きは別の列(今期と4期前の差など)で確かめる
いちばん悪い年の落ち込み(底の深さ)を見たいときは「不況に強いディフェンシブな会社を探す:5期の最低と中央値で落ち込みを測る」、同じ考え方を ROE に当てはめた例は「ROE 8%を毎年超えられるか:5期の平均と標準偏差で「いつも高い会社」を探す」を参照してください。
企業データラボなら、利益の安定度を全上場企業で一度に
企業データラボでは、5期の平均を列にしてから別の列で参照することで、標準偏差のような統計の計算も式で書けます。式を1つ作れば約3,700社すべてに当てはまり、「悪い年でも残る利益率」で並べ替えれば、高くて安定した会社が上位に並びます。
同じ考え方で、ROE や売上の伸び率の安定度も測れます。自社と競合を並べて、利益の安定度の違いを確かめることもできます。
表計算ソフトなら会社ごとに5年分を並べて計算する標準偏差も、カスタム列なら約3,700社に一度に当てはまります。
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