減配しにくい会社を探す:5年累計のフリーキャッシュフローで配当の余力を測る

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配当を長く続けられるかは、1年の利益ではなく、数年分の現金の流れで決まります。5年累計のフリーキャッシュフローと配当の比較に、利益剰余金と手元の現金で何年払えるかを組み合わせ、減配しにくさを点数にする式を紹介します。

この会社の配当は、この先も減らされずに続くでしょうか

  • 今の配当を、自分で稼いだ現金でまかなえているか
  • 利益が落ちた年に、蓄えで何年分の配当を払えるか
  • 自社株買いも含めて、稼いだ現金以上に還元していないか

配当を目当てに株式を持つなら、利回りの高さと同じくらい「減らされないか」が大切です。配当を減らす会社の多くは、利益が落ちた年に、配当を払うだけの現金が足りなくなっています。

ところが、フリーキャッシュフロー(営業キャッシュ・フローから設備投資を引いたもの)は、大きな設備投資をした年に一時的にマイナスになるなど、年ごとの上下が大きい数字です。1年だけで判断すると、投資の山の年に当たっただけの会社を見誤ります。かといって、候補の会社ごとに5年分の決算をさかのぼって合計するのは、数社ならともかく、全社ではとても手作業では追いつきません。

5年の累計と蓄えで、配当の余力を点数にします

配当を払う力を「現金の流れ」と「蓄え」の2つから測り、減配しにくさを1つの点数にまとめます。現金の流れは5年の累計どうしで比べます。投資の波がならされ、「この会社は平均的に、配当を自分で稼いだ現金で払えているか」が見えてきます。今の利回りが見せかけでないかを確かめたいときは、「高配当の罠を避ける:3年の配当性向とフリーキャッシュフローで見抜く」もあわせて使ってください。こちらの記事は「この先も配当を続けられるか」を見るためのものです。

部品の列:5年の現金と配当

まず、5年分のフリーキャッシュフローと配当をそれぞれ合計し、配当を自分で稼いだ現金で何回分まかなえたかを出します。

FCF5年累計
5年累計のフリーキャッシュフロー(百万円)= 今期〜4期前の5年分の「営業活動によるCF」の合計 − 同じ5年分の「設備投資支出」の合計
配当5年累計
5年累計の配当(百万円)= 今期〜4期前の5年分の「配当金支払額」の合計
配当カバー率5年
配当カバー率(倍)=(上で計算した)5年累計のフリーキャッシュフロー ÷ 5年累計の配当

配当カバー率が1倍なら、5年間の配当をちょうど自分の稼いだ現金で払えたことを表します。1倍を下回る会社は、借入や手元の現金を取り崩して配当を払ってきた会社です。

部品の列:蓄えで何年払えるか

剰余金で払える年数
利益剰余金で払える年数(年)= 利益剰余金 ÷ 今期の配当金支払額
現金で払える年数
手元の現金で払える年数(年)= 現金及び預金 ÷ 今期の配当金支払額

利益剰余金は、これまでに稼いで社内に残してきた利益の累計です。ただし、これは帳簿の上の数字で、現金そのものではありません。積み上げた利益の多くは、工場や在庫、子会社の株式などに姿を変えています。そこで、実際に手元にある現金で何年分の配当を払えるかも並べます。剰余金の年数は「配当を出せる原資の厚み」、現金の年数は「すぐに使えるお金の厚み」と分けて読みます。

減配しにくさを点数にする

減配しにくさの点
減配しにくさの点(100点満点)= 配当カバー率が0.8倍以下なら0点・1.5倍以上なら60点(その間は比例)+ 利益剰余金で払える年数が5年以下なら0点・20年以上なら20点(その間は比例)+ 現金で払える年数が2年以下なら0点・10年以上なら20点(その間は比例)
  • 配当カバー率:0.8倍で0点、1.5倍で満点(60点分)
  • 剰余金で払える年数:5年で0点、20年で満点(20点分)
  • 現金で払える年数:2年で0点、10年で満点(20点分)

計算例

5年間のフリーキャッシュフローの累計が1,500百万円、配当の累計が1,000百万円の会社では、配当カバー率は1.5倍で60点です。利益剰余金が3,000百万円、今の配当が年200百万円なら15年分で、(15 − 5) ÷ 15 × 20 = 約13.3点。現金及び預金が1,200百万円なら6年分で、(6 − 2) ÷ 8 × 20 = 10点。合計は約83.3点です。

自社株買いも含めた5年の還元

配当だけでなく自社株買いも含めて、5年で稼いだ現金のうちどれだけを株主に返したかも見ておくと、還元の姿勢と続けられる余力を一緒に確かめられます。

自社株買い5年累計
5年累計の自社株買い(百万円)= 今期〜4期前の5年分の「自己株式取得支出」の合計
FCF還元率5年
5年の FCF 還元率(%)=(5年累計の配当 + 5年累計の自社株買い)÷ 5年累計のフリーキャッシュフロー × 100
総還元性向5年
5年の総還元性向(%)=(5年累計の配当 + 5年累計の自社株買い)÷ 今期〜4期前の5年分の「親会社株主に帰属する当期純利益」の合計 × 100

自社株買いはまとめて行う会社が多いので、1年の総還元性向は大きくぶれます。5年の累計どうしなら、その会社が長い目で稼いだ現金をどう配ってきたかが分かります。たとえば5年の FCF が1,500百万円、配当が1,000百万円、自社株買いが200百万円なら、FCF 還元率は80%です。100%を大きく超える会社は、手元の現金や借入で還元を続けています。総還元性向の考え方は「配当性向と総還元性向:株主還元の方針を比べる」で詳しく説明しています。

読み方と使い方

  • 80点以上:現金の流れでも蓄えでも配当に余裕がある
  • 配当カバー率だけ低い:蓄えを取り崩して配当を続けている。数年は続けられても、利益が戻らなければ減配の可能性が高まる
  • 剰余金の年数は長いが現金の年数が短い:利益は積み上げてきたが、設備などに使っていて手元の現金は薄い。業績が落ちた年の配当は、借入に頼ることになりやすい

投資家なら、配当利回りの高い会社をこの点数で絞り込むと、利回りの高さが「株価の下落の結果」になっている会社を外しやすくなります。経営企画・IR なら、自社の配当方針の持続性を、競合と同じ物差しで説明する材料になります。

注意点

  • 上場から5年たっていない会社は、5期前の値が無いため空欄になる
  • 大きな M&A をした年は、投資活動によるキャッシュ・フローに入り、ここでの設備投資には入らない。M&A の多い会社は投資活動によるCF全体で見る版も作るとよい
  • 銀行・証券・保険は、キャッシュ・フローの意味が違うので外す
  • 配当の方針(配当性向の目標・累進配当)は、決算説明資料で確かめる

企業データラボなら、減配しにくさを全上場企業で一度に

企業データラボでは、過去の期の値を「[1]」〜「[4]」で参照できるので、5年の累計も1つの式で書けます。式を1つ作れば約3,700社すべてに当てはまり、5年分の決算を1社ずつさかのぼる必要はありません。

点数の高い順に並べ替えたり、配当利回りの列と並べて「利回りが高く、減配しにくい」会社に絞り込んだりできます。決算が出るたびに、点数は同じ定義で計算し直されます。

過去5期分の配当と現金の流れから、減配しにくい会社を約3,700社の中から一覧で探せます。

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