
運転資本の改善で生まれる現金を試算する:CCC を競合並みにしたら何億円か
企業データラボ
売上債権や在庫の回転を競合並みに改善できれば、その分の現金が手元に戻ります。3期の平均で回転日数を出し、競合の値で決めた目標の日数との差から生まれる現金を試算する式と、CCC が3期でどう変わったかを確かめる式を紹介します。
運転資本を競合並みにしたら、いくらの現金が生まれますか
- 自社の売上債権や在庫の回転日数は、競合より長いか
- 競合並みに縮めたら、どれだけの現金が手元に戻るか
- 資金の回収は、3期前より早くなっているか遅くなっているか
運転資本(売上債権と在庫から仕入債務を引いたもの)は、事業を回すために寝ているお金です。売掛金の回収を早めたり、在庫を減らしたりすれば、その分の現金が手元に戻ります。経営企画にとっては、借入をせずに資金を生み出す身近な手段です。
ところが、売上債権や在庫は決算期末の1日の残高で、期末の直前に大きな売上があった年や、仕入れを前倒しした年には、たまたま多く見えます。自社と競合について何期分もの残高を集めて回転日数を出し直し、目標を立てて試算するのは、表計算ソフトでも手間のかかる作業です。
3期の平均の回転日数と、競合の目標の差から試算します
回転日数を3期の合計どうしで出すと、期末のたまたまの動きがならされ、改善の目標を立てる土台として信頼しやすくなります。その日数と、競合の値から決めた目標の日数との差に、1日あたりの売上(または原価)を掛けて、生まれる現金を出します。CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)そのものの考え方は「運転資本とキャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)」で説明しています。
部品の列:回転日数(3期の平均)
売上債権・在庫・仕入債務の回転日数を3期の合計で出し、CCC にまとめます。
部品の列:CCC は3期でどう変わったか
マイナスなら、3期前より資金の回収が早くなっています。プラスが大きい会社は、回収の遅れや在庫の積み上がりが進んでいます。
目標の日数を、競合の値から決める
目標の日数は、数字だけの列(定数の列)として作っておきます。手順は次のとおりです。
- 競合分析の画面で、自社と競合を選び、上の「売上債権回転日数3年」「在庫回転日数3年」の列を並べる
- 競合の中で目標にしたい会社の値(または競合の中央値)を読み取る
- その数字を、下の目標の列の式に入れる。競合の値が変わったら、この列の数字だけを直せばよい
ここでは例として、競合の値から売上債権は60日、在庫は30日を目標にしたとします。
目標の日数との差から、生まれる現金を出す
日数の差に1日あたりの売上(または原価)を掛けると、寝ていたお金の額になります。すでに目標より短い場合は、差を0として扱っています。目標を別の列にしておくと、計算の式を変えずに、目標だけを差し替えて何通りも試算できます。
計算例
3期の売上高の合計が10,950百万円(年3,650百万円)、売上債権の合計が2,700百万円の会社では、売上債権回転日数は90日です。目標の60日まで縮めると、30日 × 1日あたりの売上10百万円 = 300百万円の現金が生まれる計算です。
使い方
- 経営企画:中期経営計画で「運転資本の改善で◯億円」といった目標を、競合の水準を根拠に立てる
- 財務・経理:改善の効果を、債権と在庫のどちらから狙うかの優先順位づけに使う
- 投資家:CCC が3期で悪化している会社を見つけ、売上の質に問題がないかを確かめる(利益と現金の差を見る「利益の「質」を測る3つの式:会計発生高・キャッシュ転換率・売上債権の先行」の式もあわせて使う)
注意点
- 業種によって適切な日数は大きく違う。目標は同じ業種の競合から決める
- 仕入債務の日数を延ばすことでも CCC は縮むが、取引先との関係に配慮が必要(ここでは試算に含めていない)
- 売上債権に、営業債権以外(長期の貸付など)が入る会社もある
企業データラボなら、運転資本の改善余地を競合と一度に試算
企業データラボでは、「[1]」「[2]」で過去の期を参照できるので、3期分の残高を使った回転日数も1つの式で書けます。競合分析の画面で自社と競合を同じ定義で並べ、目標の列の数字を差し替えるだけで、何通りもの試算を同じ表で比べられます。
式は約3,700社すべてに当てはまるので、同じ業種の全社の中で回転日数の短い会社を並べ替えて探し、目標にする相手を選ぶこともできます。
自社と競合の回転日数を3期の平均で並べ、競合並みにしたら生まれる現金を同じ表で試算できます。
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