利益の「質」を測る3つの式:会計発生高・キャッシュ転換率・売上債権の先行

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同じ利益でも、現金の裏付けがある利益と無い利益があります。会計発生高・3期のキャッシュ転換率・売上債権と在庫の先行という3つの式で利益の質を測り、警戒度を1つの点数にまとめる方法を解説します。

利益は伸びているのに、現金が増えていない会社を見逃していませんか

  • この会社の利益は、ちゃんと現金として入ってきているのか
  • 売上の伸び以上に、売掛金や在庫が膨らんでいないか
  • 利益の伸びが大きい会社のうち、来年以降も続きそうなのはどこか

損益計算書の利益は、会計のルールに沿って計算した数字です。売上を計上しても代金をまだ受け取っていなければ、利益は増えても現金は増えません。このような「現金の裏付けの薄い利益」は、翌年以降に続きにくいことが知られています。

利益と現金の差は、1年だけでは売掛金を回収した時期などでぶれるため、何年分かを並べて見る必要があります。損益計算書・貸借対照表・キャッシュ・フロー計算書を複数年分そろえて計算する作業は、1社でも手間がかかり、全社で比べるのは手作業では現実的ではありません。

3つの式で利益の質を測り、1つの警戒度にまとめられます

利益の質は、利益と現金の差(会計発生高)、利益が現金に変わる割合(キャッシュ転換率)、売上債権と在庫の膨らみ、の3つの角度から測れます。それぞれを点数にして平均すれば、1つの警戒度として全社を並べられます。

1. 会計発生高:利益と現金の差

会計発生高(アクルーアル)は、当期純利益と営業キャッシュ・フローの差です。利益のうち、現金として入ってきていない部分を表します。会社の大きさをそろえるため、総資産で割ります。

会計発生高比率
会計発生高比率(%)=(当期純利益 − 営業キャッシュ・フロー)÷(期首と期末の総資産の平均)× 100

この値が大きい(プラスが大きい)ほど、利益に対して現金が入っていない会社です。米国の研究(スローン、1996年)では、会計発生高の大きい会社ほど、翌年以降の利益が落ちやすい傾向が報告されています。元の研究は貸借対照表の科目の増減から発生高を計算していますが、ここで使う「利益と営業キャッシュ・フローの差」も、広く使われている代わりの方法です。総資産は期首と期末の平均を使い、期中の増減の影響をならしています。

2. 3期のキャッシュ転換率:利益は現金になっているか

1年の営業キャッシュ・フローは、売掛金を回収した時期などでぶれます。3期の合計どうしで比べると、そのぶれがならされ、利益がどれだけ現金に変わっているかが見えてきます。

キャッシュ転換率3年
3年のキャッシュ転換率(%)= 直近3期の営業キャッシュ・フローの合計 ÷ 直近3期の当期純利益の合計 × 100

減価償却費があるため、健全な会社ではこの値が100%を上回るのが普通です。3年続けて80%を下回る会社は、利益の一部が売掛金や在庫に変わったまま、現金になっていない可能性があります。なお、3期の利益の合計がマイナスの会社では、この比率は意味を持たないので、別に見ます。名前は似ていますが、「運転資本とキャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)」のキャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC。資金の回収までの日数)とは別の指標です。

3. 売上債権と在庫の先行:売上より早く膨らんでいないか

売上が10%伸びたのに、売掛金と在庫が30%増えていたら要注意です。無理な押し込みの販売や、売れ残りの在庫が積み上がっている可能性があります。売上の伸びとの差を取ると、その「膨らみ」が分かります。

運転資本の膨らみ
運転資本の膨らみ(ポイント)={(営業債権 + 棚卸資産)の前期比 − 売上高の前期比}× 100

売上高の伸び率と、売上債権と在庫の合計の伸び率の差(%ポイント)です。0に近ければ売上と同じペースで増えている、大きなプラスなら売上より先に膨らんでいることを表します。

3つを1つの警戒度にまとめる

3つの指標を、それぞれ0〜1の点数に変えて平均します。点数の作り方は「スクリーニングをスコアリングする式:MIN と MAX で条件を0〜100点に変える」で紹介した、MIN と MAX で挟む形です。

発生高の警戒
発生高の警戒 = 会計発生高比率が3%以下なら0、10%以上なら1、その間は比例
転換率の警戒
転換率の警戒 = 3年のキャッシュ転換率が90%以上なら0、50%以下なら1、その間は比例
膨らみの警戒
膨らみの警戒 = 運転資本の膨らみが5ポイント以下なら0、20ポイント以上なら1、その間は比例
利益の質の警戒度
利益の質の警戒度(100点満点)=(発生高の警戒 + 転換率の警戒 + 膨らみの警戒)÷ 3 × 100
  • 会計発生高比率:3%で警戒0、10%で警戒1
  • キャッシュ転換率:90%で警戒0、50%で警戒1
  • 運転資本の膨らみ:5ポイントで警戒0、20ポイントで警戒1

3つの指標のうち2つは、複数年のデータを使っています。会計発生高も1年だけでは判断せず、前の期の値を並べて、2年続けて高いかを見ると、一時的な要因と区別しやすくなります。

会計発生高比率_前期
前期の会計発生高比率(%)=(1期前の当期純利益 − 1期前の営業キャッシュ・フロー)÷(1期前と2期前の総資産の平均)× 100

警戒度の読み方

警戒度が高い会社は、決算短信の売上債権や在庫の説明、セグメントごとの動きを確かめましょう。逆に、利益の伸びが大きいのに警戒度が低い会社は、質の高い成長をしていると言えます。

当てはめるときの注意

  • 銀行・証券・保険は、営業キャッシュ・フローの意味が一般の会社と違うので外す
  • 急成長中の会社は、運転資本が増えるのが自然。成長率の高い会社どうしで比べる
  • 大きな資産の売却益や減損があった年は、当期純利益が一時的に動く
  • 会計基準によって、利息や配当の受け取りを営業と投資のどちらに入れるかが違う

企業データラボなら、利益の質を全上場企業で一度に確かめられます

企業データラボのカスタム列では、過去の期の値を「[1]」「[2]」で参照できるので、3期の合計や前期との比較も1行の式で書けます。式を一度作れば約3,700社すべてに同じ定義で当てはまり、決算のたびに計算し直されます。

警戒度の列を一覧に足しておけば、警戒度で並べ替えて注意が必要な会社を拾い出したり、業種で絞って同業と比べたりできます。投資先や取引先の利益の質の変化を、決算のたびにすぐ確かめられます。

3期の累計どうしで比べる式も1行で書け、約3,700社のキャッシュ転換率を決算のたびに並べ直せます。

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