株主還元の強化が期待できる会社:PBR の低さ×還元の余地を3年の実績で探す

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利益を稼ぎ、お金も余っているのに、株主への還元が少ない会社があります。3年の総還元性向、時価総額に対する余剰資金、PBR の3つを点数にして還元の強化が期待できる会社を探し、3年累計の FCF と余った現金から自社株買いの余力も見積もる式を紹介します。

お金が余っているのに還元が少ない会社は、どこにありますか

  • 利益を安定して稼ぎ、お金も余っているのに、還元が少ない会社はどこか
  • そうした会社の中で、株価が資産に対して安い会社はどこか
  • 還元を強めるとしたら、自社株買いにどれだけのお金を回せるか
  • 自社は、投資家からこの見方で選ばれていないか

2023年に東京証券取引所が、上場企業に「資本コストや株価を意識した経営」を求めて以来、配当や自社株買いを増やす会社が目立っています。それでも、利益を稼いでお金も余っているのに、還元が少ないままの会社はまだあります。

総還元性向(配当と自社株買いの合計 ÷ 当期純利益)は、自社株買いを大きく行った年にだけ高くなります。1年だけでは「たまたま買った年」と「いつも還元している会社」を区別できません。3年分の還元の実績、手元の資金、今の株価を全社で突き合わせるのは、手作業ではまず無理です。

3年の実績と余剰資金、PBR を点数にします

「還元が少ない」「お金が余っている」「株価が資産に対して安い」の3つがそろった会社を点数で探し、そうした会社が自社株買いにどれだけのお金を回せるかも見積もります。還元の実績は3年の合計どうしで割り、その会社の普段の還元の姿勢を見ます。PBR が低い会社の中でも、ROE の改善から見直されそうな会社を探す方法は「PBR 1倍割れから抜け出しそうな会社を探す:ROE の3期の改善の勢いを測る」で紹介しています。

部品の列

3年の総還元性向、時価総額に対する余剰資金、3年続けて黒字かの判定を計算します。

総還元性向3年
3年の総還元性向(%)=(今期〜2期前の3年分の配当金支払額の合計 + 同じ3年分の自己株式取得支出の合計)÷ 同じ3年分の親会社株主に帰属する当期純利益の合計 × 100
余剰資金の時価総額比
余剰資金の時価総額比(%)= { 現金及び預金 − 年の売上高の1.5か月分(売上高 ÷ 8。マイナスなら0)+ 投資有価証券・関係会社投資 × 0.7 − 短期の有利子負債 − 長期の有利子負債 }÷ 時価総額 × 100
3年黒字
3年黒字の判定 = 今期・1期前・2期前の親会社株主に帰属する当期純利益がすべてプラスなら1、そうでなければ0

余剰資金は、「現金と投資有価証券を差し引いた「実質 PER」:資産の厚い日本企業を正しく比べる」の「余剰資産」と同じ定義です。事業に必要な現金として年の売上高の1.5か月分(売上高 ÷ 8)を残した残りの現金と、投資有価証券を税などを考えて7割で数えたものから、借入を引いています。3年黒字は、還元の原資となる利益を安定して稼いでいるかの判定です。

点数にまとめる

還元の少なさ
還元の少なさの点 = 3年の総還元性向が60%以上なら0点、20%以下なら1点、その間は比例して点数を付ける
余剰の多さ
余剰の多さの点 = 余剰資金の時価総額比が10%以下なら0点、50%以上なら1点、その間は比例して点数を付ける
PBRの低さ
PBR の低さの点 = PBR が1.5倍以上なら0点、0.5倍以下なら1点、その間は比例して点数を付ける
還元強化期待の点
還元強化期待の点(100点満点)=(還元の少なさの点 + 余剰の多さの点 + PBR の低さの点)÷ 3 × 100 × 3年黒字の判定(3年続けて黒字でなければ0点)
  • 総還元性向(3年):60%で0点、20%以下で満点
  • 余剰資金:時価総額の10%で0点、50%で満点
  • PBR:1.5倍で0点、0.5倍以下で満点
  • 3年続けて黒字でない会社は0点

計算例

3年間の配当の合計が90百万円、自社株買いが0、純利益の合計が300百万円の会社は、総還元性向が30%で、(60 − 30) ÷ 40 = 0.75点。余剰資金が時価総額の30%なら0.5点、PBR が0.8倍なら0.7点。平均は0.65で、3年黒字なら65点です。

自社株買いにどれだけ回せるか

点数の高い会社が還元を強めるとしたら、どれくらいの自社株買いができるかも見積もれます。配当を払ったあとに残る現金の「平均的な1年」と、手元の余った現金を3年かけて使う分を足します。フリーキャッシュフローは設備投資の時期で年ごとに大きく動くので、3年の累計を3で割って平均的な1年にしています。

FCF3年累計
3年累計のフリーキャッシュフロー(百万円)= 今期〜2期前の3年分の「営業活動によるCF」の合計 − 同じ3年分の「設備投資支出」の合計
配当後のFCF年平均
配当後の FCF の年平均(百万円)=(3年累計のフリーキャッシュフロー − 今期〜2期前の3年分の配当金支払額の合計)÷ 3
自社株買いの余力年
自社株買いの余力(百万円/年)= 配当後の FCF の年平均 + 余った現金 ÷ 3(余った現金 = 現金及び預金 − 売上高 ÷ 8 − 短期と長期の有利子負債。マイナスなら0)。全体がマイナスなら0
余力の時価総額比
余力の時価総額比(%)= 自社株買いの余力 ÷ 時価総額 × 100
余力の活用度
余力の活用度(%)= 今期〜2期前の3年分の自己株式取得支出の合計 ÷ 3 ÷ 自社株買いの余力 × 100

余力はマイナスにならないよう、0を下限にしています。配当だけで現金が足りていない会社は余力0です(このとき活用度は割り算ができず空欄になります)。余力の時価総額比は、余力をすべて自社株買いに回したら、1年で発行済株式の何%を買えるかの目安です。余力の活用度は、過去3年の実際の自社株買いが余力のどれくらいだったかを表します。

たとえば、3年のフリーキャッシュフローの累計が900百万円、配当の累計が300百万円なら、配当後の FCF は年200百万円です。現金が1,000百万円、売上高が2,400百万円(必要な現金は300百万円)、借入が100百万円なら、余った現金は600百万円で、年200百万円分。余力は年400百万円で、時価総額が8,000百万円なら、余力の時価総額比は5%です。

使い方

  • 投資家:点数が高く、余力の時価総額比も高い会社の中期経営計画や決算説明資料で、還元の方針が見直される兆しがないかを確かめる
  • 経営企画・IR:自社が投資家からこの見方で選ばれていないかを確かめ、還元と成長投資の方針を説明する準備をする
  • 活用度が100%を超える会社:余力以上に還元している。借入を増やしているか、手元の現金を減らしている

注意点

  • 余剰資金が多くても、大きな投資や M&A の計画がある会社もある
  • 親会社が大株主の会社(親子上場)は、還元の方針が親会社の意向に左右される
  • 投資有価証券には事業上の関係の深い会社の株式も含まれる。現金だけで計算した列も並べるとよい
  • 必要な現金の水準は業種で違う。前受金の多い業種などは、売上高 ÷ 4(3か月分)に変えた列も作る
  • 銀行・証券・保険は外す

企業データラボなら、還元の強化が期待できる会社を全上場企業から一度に

企業データラボでは、「[1]」「[2]」で参照する3年分の還元の実績と、今の時価総額・PBR を1つの式で組み合わせられます。式を1つ作れば約3,700社すべてに当てはまり、還元強化期待の点と自社株買いの余力を同じ表に並べられます。

点数で並べ替えて候補を絞り込んだり、経営企画・IR なら自社と競合を並べて、還元の姿勢と余力を同じ物差しで比べたりできます。決算や株価が更新されるたびに、点数と余力も計算し直されます。

3年分の還元の実績と余剰資金、PBR を組み合わせ、約3,700社から還元の強化が期待できる会社を探せます。

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