
EV/EBITDA 倍率とは?計算式と業種別の目安(上場企業2,801社の中央値)
企業データラボ
·財務指標
企業価値(EV)と EBITDA の考え方、EV/EBITDA 倍率の計算式と PER との違いを解説します。上場企業2,801社の実データから業種別の中央値と分布を集計し、全社に同じ定義で当てはめる式も紹介します。
借入の多さや会計基準の違う会社どうしを、どうやって割安・割高で比べるか?
- 会社を丸ごと買うとしたら、本業の利益の何年分の値段なのか
- その倍率は、同じ業種の中で高いのか低いのか
- たまたま利益の多かった年に、割安に見えているだけではないか
PER は借入の多さや一時的な損益で大きく動くため、条件の違う会社を比べるには向かないことがあります。EV/EBITDA 倍率なら比べやすくなりますが、時価総額・借入・現金・営業利益・減価償却費を各社から集める必要があり、何千社分を手で計算するのは大変です。
EV/EBITDA 倍率の計算式で、本業の価値を同じ物差しで比べられます
EV/EBITDA 倍率は、会社を丸ごと買うときの値段(EV)が、本業で生み出す利益とキャッシュの目安(EBITDA)の何年分にあたるかを表す指標です。M&A の価格の検討や、国・会計基準・借入の多さが違う会社の比較でよく使われます。
PER と比べた利点
- 借入の多い少ないに左右されにくい(借入は EV の側に入る)
- 税率や減価償却の方法の違いの影響を受けにくい
- 設備の重い業種どうしの比較に向く
- 純利益が一時的な損益で大きく動いた年でも、本業の水準で比べられる
業種別の目安:上場企業2,801社の中央値
企業データラボの財務データから、業種ごとの EV/EBITDA 倍率を集計しました。同じ業種の中で、ある会社が高い方にいるのか低い方にいるのかを判断する目安になります。
| 業種 | 社数 | 中央値 | 下位25% | 上位25% |
|---|---|---|---|---|
| 精密機器 | 43社 | 10.9倍 | 7.9倍 | 13.7倍 |
| 不動産業 | 112社 | 10.3倍 | 7.3倍 | 15.7倍 |
| 電気機器 | 190社 | 9.4倍 | 6.0倍 | 15.1倍 |
| 医薬品 | 31社 | 9.1倍 | 7.0倍 | 14.9倍 |
| 水産・農林業 | 10社 | 8.7倍 | 7.7倍 | 9.5倍 |
| 陸運業 | 56社 | 8.7倍 | 6.2倍 | 10.6倍 |
| 倉庫・運輸関連業 | 27社 | 8.4倍 | 7.4倍 | 12.0倍 |
| 食料品 | 108社 | 8.4倍 | 6.5倍 | 11.4倍 |
| 小売業 | 234社 | 8.3倍 | 5.9倍 | 12.5倍 |
| 繊維製品 | 32社 | 8.3倍 | 6.2倍 | 12.6倍 |
| 海運業 | 11社 | 8.2倍 | 7.1倍 | 11.9倍 |
| 電気・ガス業 | 26社 | 8.2倍 | 6.1倍 | 10.1倍 |
| 情報・通信業 | 421社 | 8.0倍 | 5.0倍 | 12.8倍 |
| 機械 | 174社 | 8.0倍 | 5.1倍 | 12.2倍 |
| 非鉄金属 | 25社 | 7.9倍 | 4.0倍 | 12.5倍 |
| 卸売業 | 242社 | 7.5倍 | 5.0倍 | 10.4倍 |
| 化学 | 184社 | 7.5倍 | 5.2倍 | 10.1倍 |
| その他製品 | 78社 | 7.4倍 | 5.2倍 | 10.3倍 |
| 建設業 | 123社 | 7.4倍 | 5.1倍 | 9.4倍 |
| パルプ・紙 | 21社 | 7.0倍 | 5.6倍 | 9.7倍 |
| サービス業 | 401社 | 7.0倍 | 4.6倍 | 10.2倍 |
| ゴム製品 | 16社 | 6.9倍 | 5.2倍 | 7.9倍 |
| ガラス・土石製品 | 41社 | 6.7倍 | 5.1倍 | 11.5倍 |
| 金属製品 | 75社 | 6.2倍 | 4.3倍 | 8.9倍 |
| 鉄鋼 | 34社 | 5.5倍 | 4.4倍 | 9.0倍 |
| 輸送用機器 | 71社 | 4.6倍 | 2.6倍 | 5.5倍 |
| 全体(金融を除く) | 2,801社 | 7.7倍 | 5.2倍 | 11.5倍 |
全体の中央値は7.7倍で、半分の会社が5.2〜11.5倍の範囲に入ります。精密機器・不動産業・電気機器は高めで、輸送用機器・鉄鋼・金属製品は低めです。成長への期待や、利益の安定さ、設備の重さの違いが表れていると考えられます。業種によって水準が大きく違うので、倍率の高い低いは、まず同じ業種の中で比べましょう。
全社に同じ定義で当てはめる
考え方はシンプルで、時価総額に借入を足して手元の現金を引いたもの(EV)を、営業利益に減価償却費を足したもの(EBITDA)で割るだけです。上の表と同じ定義で式にすると、次のとおりです。
1年の EBITDA は、大きな案件や一時的な費用で動きます。分母を3期の平均にした版も並べると、たまたま利益の多かった年に倍率が低く見えている会社を見分けられます。
業種の中央値で割ると、業種の水準に比べて高いか低いかを1つの数字で見られます。たとえば電気機器の会社なら、上の表の中央値9.4倍で割ります。1を下回れば、業種の中では低い倍率で評価されています。
注意点
- EBITDA は設備投資に必要な資金を考えないため、設備の更新に多くの資金がかかる会社では実力以上に見えることがある
- 時価総額は今日の値、借入と現金は直近の決算期末の値。決算期末から時間がたつと、ずれが大きくなる
- リース負債を有利子負債に含めるかで EV が変わる。IFRS の会社はリースが負債に載るため、日本基準の会社と比べるときに注意する
- 金融子会社を持つ会社(自動車・機械の販売金融など)は、その借入が EV を大きく見せる
- 営業利益が小さい会社は倍率が極端な値になる
EBITDA に対する事業の価値を使って会社を選ぶ「「魔法の公式」を再現する:益回りと3年平均の資本利益率で選ぶ」、EBITDA で借入の返済力を見る「借入を何年で返せるか:3年平均の EBITDA で見る債務償還年数」、余った現金を差し引いて事業の価値を見る「現金と投資有価証券を差し引いた「実質 PER」:資産の厚い日本企業を正しく比べる」もあわせてご覧ください。
企業データラボなら、EV/EBITDA 倍率を全上場企業で一度に計算できます
企業データラボのカスタム列なら、上の式を一度作るだけで、約3,700社の EV/EBITDA 倍率が同じ定義で計算されます。過去の期の数字も使えるので、3期平均の版も並べられます。
結果で並べ替え・絞り込みをすれば、業種の中で倍率の低い会社・高い会社を一覧で確かめ、競合と比べられます。
EV/EBITDA 倍率を約3,700社で計算し、業種の中での位置や3期平均の版と並べて比べられます。
お問い合わせ


