
借入を何年で返せるか:3年平均の EBITDA で見る債務償還年数
企業データラボ
有利子負債を、本業で生み出す現金の何年分で返せるかを表す債務償還年数の式を紹介します。EBITDA を3年平均にしてぶれをならし、手元の現金を差し引いた版、銀行がよく使う税引後のキャッシュフローでの版、3期前の3年平均との比較で、返済の力の変化を確かめます。
取引先や競合の借入、本当に返せる水準でしょうか
- この会社の借入は、本業で稼ぐ現金の何年分にあたるのか
- 手元の現金を差し引くと、実質的な借入の負担はどのくらいか
- 3期前と比べて、返済の力は強まったのか、弱まったのか
債務償還年数は、借入(有利子負債)を、本業で生み出す現金で返すと何年かかるかを表す指標です。銀行が融資の判断に使う代表的な物差しで、取引先の安全性を確かめるときにも役立ちます。
ただ、本業で生み出す現金は、景気や大型の案件で年によって大きく動きます。良い年で割れば返済の力を高く見積もり、悪い年で割れば低く見積もります。ふだんの返済の力や、その変化を知るには何年分もの決算が必要で、取引先を何十社も見るとなると、1社ずつ手で計算するのは現実的ではありません。
3年平均の EBITDA で割る計算式で、返済の力が分かります
考え方の要点は、有利子負債を、本業で生み出す現金(EBITDA = 営業利益 + 減価償却費)の3年平均で割ることです。3年の平均で割ると、その会社がふだん返せる力に近い数字になります。計算の仕方にはいくつかの流儀があるので、まず上場企業どうしを比べやすい EBITDA での年数を作り、そのあとで銀行の一般的な定義に近い版と、3期前との比較も紹介します。
EBITDA の3年平均で債務償還年数を出す
ネットの債務償還年数は、手元の現金ですぐに返せる分を差し引いたものです。マイナスなら、現金が借入を上回っている(実質的に無借金の)会社です。EBITDA の考え方は「EV/EBITDA 倍率とは?計算式と業種別の目安(上場企業2,801社の中央値)」で説明しています。
計算例
有利子負債が短期100億円・長期500億円の合計600億円、営業利益が直近から80億円・60億円・100億円、減価償却費が毎年40億円の会社なら、EBITDA は120億円・100億円・140億円で、3年平均は120億円です。債務償還年数は5年になります。現金及び預金が240億円あれば、ネットの債務償還年数は3年です。
銀行の定義に近い版
銀行が融資の審査で使う債務償還年数は、一般に、借入から事業に必要な運転資金(正常運転資金)を差し引き、税金を払ったあとのキャッシュフロー(当期純利益 + 減価償却費)で割って計算します。税金を差し引く分、EBITDA で割るよりも年数は長く出ます。
「10年以内なら健全」といった目安は、この税引後のキャッシュフローでの年数を前提に語られることが多いものです。EBITDA で計算した年数にそのまま当てはめると甘くなるので、目安と比べるときは銀行型の列を使ってください。
3期前と比べて、返済の力は強まったか
今の年数だけでなく、3期前の時点の年数と比べると、借入の負担が軽くなっているのか重くなっているのかが分かります。比べる物差しをそろえるため、3期前の年数も、その時点から見た3年平均の EBITDA(3期前〜5期前)で計算します。
年数の変化がマイナスなら、借入の返済や利益の増加で、返済の力が強まっています。プラスが大きい会社は、借入を増やしたか、稼ぐ力が落ちたかのどちらかです。
営業キャッシュ・フローで見る版
EBITDA は税金や運転資本の増減を考えません。実際に入ってきた現金で見たい場合は、営業キャッシュ・フローの3年平均で割ります。
読み方
- 銀行型の年数でおおむね10年以内なら、返済の力に余裕があると見られることが多い(業種によって違う)
- 設備の重い業種(電力・不動産・鉄道など)は、もともと借入が多く年数が長い。同じ業種の中で比べる
- EBITDA の3年平均がマイナスや0の会社は、年数が意味を持たない(空欄や極端な値になる)
取引先の管理での使い方
取引先の一覧に債務償還年数と年数の変化の列を並べておけば、決算のたびに、返済の力が急に落ちた会社をすぐに見つけられます。財務の状態を総合的に見る「取引先の倒産リスクの目安:Z スコアを再現し、3期の推移で悪化を見る」の Z スコアとあわせると、与信の見直しの優先順位を決める材料になります。
注意点
- リース負債や社債の扱いは、会計基準や会社の表示によって違う。有利子負債の範囲をそろえて比べる
- 金融業は借入が事業そのものなので外す
- EBITDA は簡易な計算(営業利益 + 減価償却費)。一時的な損益が営業利益に入っている年に注意する
- 3期前との比較は6期分のデータを使う。上場して6期に満たない会社は空欄になる
企業データラボなら、取引先の返済の力を全上場企業で一度に確かめられます
企業データラボでは、過去の期の値を「[1]」〜「[5]」で参照できるので、3年平均の EBITDA を使った債務償還年数も、その3期前との比較も1つの式で書けます。式を一度作れば約3,700社に同じ定義で当てはまり、年数の長い会社や、3期前より年数が延びた会社を並べ替えや絞り込みですぐに見つけられます。
取引先や競合を一覧にしておけば、決算のたびに計算し直されるので、返済の力の変化を見落としにくくなります。
取引先や競合の債務償還年数と3期前からの変化を、一覧で確かめてみませんか。
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