
実効税率(税の負担率)を3期の合計で比べる:1年のぶれに惑わされない見方
企業データラボ
法人税等を税引前当期純利益で割る実際の税の負担率は、1年だけだと大きくぶれます。法定の実効税率との違いを押さえたうえで、3期の合計どうしで割る式で税の負担を競合と比べ、目安との差が利益にどれだけ影響しているかを計算する方法を解説します。
今期の税の負担率、その数字をそのまま信じてよいのでしょうか
- この会社が実際に払っている税の負担は、ふだんどのくらいなのか
- 今期の税金は、一時的に多かった(少なかった)のではないか
- 競合との純利益率の差は、税の負担の違いでどれだけ説明できるのか
「実効税率」という言葉には、2つの意味があります。1つは、法人税・住民税・事業税を合わせた、法律で決まる税率(法定の実効税率)で、日本ではおおむね30%程度です。もう1つは、損益計算書の法人税等を税引前当期純利益で割った、実際の税の負担率です(「税負担率」とも呼ばれます)。同じ法定の実効税率のもとでも、実際の税の負担率は、海外の事業の比率、税の優遇、赤字の子会社の有無などで会社ごとに違い、手元に残る利益が変わります。
ところが、1年の税の負担率は、繰延税金資産の取り崩しや、過去の赤字の繰り越しなどで大きく動きます。ある年は50%、翌年は10%ということも珍しくありません。ふだんの負担を知るには何期分もの決算をさかのぼる必要があり、競合を何社も並べて比べるとなると、手作業ではかなりの手間になります。
3期の合計どうしで割れば、ふだんの税の負担が見えてきます
考え方の要点は、税の負担率を1年ずつではなく、3期の税金の合計を3期の税引前の利益の合計で割って求めることです。一時的な動きがならされ、その会社のふだんの税の負担が見えてきます。さらに、法定の実効税率の目安との差を金額にすれば、税の面で利益がどれだけ多く(少なく)残っているかも分かります。
単年と3期の税の負担率を並べる
単年と3期の差が大きい年は、その年の税金に一時的な要因が入っている可能性があります。利益の見通しを立てるときは、3期の税負担率を使う方が安定します。
目安との差が利益に与える影響
3期の税負担率が法定の実効税率の目安(ここでは30%)より低ければ、税の面で利益が多く残っていることになります。その差を金額にしてみます。法定の税率は税制の改正で変わることがあるので、式の30は、その時々の税率に合わせて直してください。
計算例
税引前当期純利益が3期とも100億円、法人税等が直近から35億円・25億円・30億円の会社なら、単年の税負担率は35%ですが、3期の税負担率は30%です。単年と3期の差は5ポイントで、今期の税金には一時的に多く払った分が含まれていると読めます。
3期の税負担率が25%の会社なら、目安の30%と比べて、3年で税引前の利益の5%分、多く利益が残っています。税引前の利益が3期で300億円なら、約15億円です。
読み方
- 3期の税負担率が目安より低い:海外の低い税率の地域での利益、税の優遇、過去の赤字の繰り越しなど。続くものかを確かめる
- 3期の税負担率が目安より高い:赤字の子会社の損失が税金を減らせていない、税金のかからない費用が多い、など
- 単年と3期の差が大きい:その年の当期純利益は、税の面で一時的に増えた(減った)可能性がある
使い方の例
- 投資家:来期の純利益を見積もるとき、単年ではなく3期の税負担率を使う
- 経営企画:競合との純利益率の差のうち、税の負担の違いでどれだけ説明できるかを確かめる(競合の比べ方の全体は「財務データで行う競合分析の進め方:比べる会社・指標・期間の決め方」を参照)
注意点
- 3期のうちに税引前の利益が赤字の年があると、合計どうしの割り算でもゆがみが出る。赤字の年がある会社は別に見る
- 税引前の利益の合計が0に近い会社は、割り算が不安定になる
- 法定の実効税率は、会社の規模や所在地、税制の改正で変わる。30%はおおまかな目安
- 会計基準によって、税金の表示の区分が違うことがある(「日本基準と IFRS の企業を比べるときの注意点」)
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