取引先の倒産リスクの目安:Z スコアを再現し、3期の推移で悪化を見る

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アルトマンの Z スコアを、企業データラボで使える科目で再現する式を紹介します。株価を使わない4つの項目と、株価を使わない改良版の Z'' スコアで2期前からの推移を追い、財務の悪化が続いている取引先を早めに見つける方法と、目安として使うときの注意点を解説します。

取引先の財務の悪化に、早めに気づけていますか

  • 取引先の中で、財務の状態が危うい会社はどこか
  • その悪化は、たまたま悪かった1年なのか、何年も続いているのか
  • どの取引先から優先して与信を見直すべきか

取引先の財務を確かめるとき、決算書の数字を1つずつ見ていくと、どこを重く見ればよいのか迷います。しかも、1年の数字だけでは、一時的な落ち込みなのか、悪化が続いているのかが分かりません。何期分もの決算をさかのぼり、取引先を何十社も見比べるのは、手作業では大きな負担です。

また、財務の点数の水準は業種や事業の形によって大きく違い、もともと低めの業種もあります。それよりも大事なのは、同じ会社の点数が年々下がっていないかです。

Z スコアを再現する計算式で、悪化の兆しをつかめます

Z スコアは、米国の研究者エドワード・アルトマンが1968年に発表した、財務の数字から企業の倒産のしやすさを1つの点数にする方法です。5つの財務の比率に係数を掛けて足し合わせます。与信の管理で、取引先の財務の状態をざっと確かめる目安として広く知られています。

この記事では、Z スコアを再現する式と、今期と2期前(3期分の始め)を比べて悪化を見る使い方を紹介します。Z スコアは倒産を予言するものではなく、確かめる優先順位を決めるための目安として使うものです。

5つの項目

  • X1 運転資本 ÷ 総資産(係数1.2):短期の支払いの余裕
  • X2 利益剰余金 ÷ 総資産(係数1.4):これまでに積み上げた利益
  • X3 営業利益 ÷ 総資産(係数3.3):資産で稼ぐ力
  • X4 時価総額 ÷ 負債合計(係数0.6):市場の評価と負債のバランス
  • X5 売上高 ÷ 総資産(係数1.0):資産を回す効率

元の研究では、利払い前・税引前の利益(EBIT)を使いますが、ここでは営業利益で代わりにしています。

Z スコアを計算する

Z部分_今期
Z部分 = 1.2 ×(流動資産合計 − 流動負債合計)÷ 総資産 + 1.4 × 利益剰余金 ÷ 総資産 + 3.3 × 営業利益 ÷ 総資産 + 1.0 × 売上高 ÷ 総資産
Zスコア
Z スコア = Z部分 + 0.6 × 時価総額 ÷ 負債合計

時価総額を使う X4 だけを別にしているのには理由があります。式に使える時価総額は最新の値だけで、過去の期の時価総額は使えません。そこで、推移を見るときは、財務の数字だけでできた4つの項目の合計(Z部分)を使います。

2期前と比べて、悪化が続いていないかを見る

今期と2期前(3期分の始め)を比べれば、たまたま悪かった1年なのか、悪化が続いているのかを分けやすくなります。

Z部分_2期前
2期前の Z部分 = 2期前の数字で、1.2 ×(流動資産合計 − 流動負債合計)÷ 総資産 + 1.4 × 利益剰余金 ÷ 総資産 + 3.3 × 営業利益 ÷ 総資産 + 1.0 × 売上高 ÷ 総資産
Z部分の2期前からの変化
Z部分の変化 = 今期の Z部分 − 2期前の Z部分

計算例

総資産1,000億円、流動資産500億円、流動負債300億円、利益剰余金200億円、営業利益50億円、売上高1,200億円、負債合計600億円、時価総額400億円の会社を考えます。4つの項目の合計は、0.24 + 0.28 + 0.165 + 1.2 = 1.885です。X4 は 0.6 × 400 ÷ 600 = 0.4 なので、Z スコアは約2.29になります。

元の研究では、Z スコアが2.99を上回ると安全な領域、1.81を下回ると注意の領域、その間はどちらとも言えない領域とされています。この会社は中間の領域です。

株価を使わない改良版:Z'' スコア

アルトマンは、製造業以外の会社や上場していない会社にも使えるよう、株価を使わず、売上高の項目も外した改良版(Z'' スコア)も示しています。係数は X1 が6.56、X2 が3.26、X3 が6.72、X4 が1.05で、X4 は時価総額の代わりに純資産の帳簿の値 ÷ 負債合計を使います。すべて財務の数字なので、過去の期の推移もそのまま比べられます。

Zダブルプライム
Z'' スコア = 6.56 ×(流動資産合計 − 流動負債合計)÷ 総資産 + 3.26 × 利益剰余金 ÷ 総資産 + 6.72 × 営業利益 ÷ 総資産 + 1.05 × 純資産合計 ÷ 負債合計
Zダブルプライム2期前
2期前の Z'' スコア = 2期前の数字で、6.56 ×(流動資産合計 − 流動負債合計)÷ 総資産 + 3.26 × 利益剰余金 ÷ 総資産 + 6.72 × 営業利益 ÷ 総資産 + 1.05 × 純資産合計 ÷ 負債合計

上の会社(純資産400億円)なら、1.312 + 0.652 + 0.336 + 0.7 = 3.0です。一般に、Z'' スコアは2.6を上回ると安全な領域、1.1を下回ると注意の領域とされています。

読み方

  • Z部分の2期前からの変化がマイナス:財務の状態が悪くなっている。どの項目で下がったかを確かめる
  • 営業利益の項目(X3)が下がっている:稼ぐ力の低下
  • 運転資本の項目(X1)が下がっている:短期の支払いの余裕が減っている
  • 利益剰余金の項目(X2)が下がっている:赤字や大きな配当で、積み上げた利益が減っている

取引先の管理での使い方

取引先の企業をまとめて一覧にし、Z スコアと2期前からの変化の列を並べます。点数が低い会社、点数が下がり続けている会社から順に、決算短信や適時開示で状況を確かめると、与信の見直しを効率よく進められます。返済の力は「借入を何年で返せるか:3年平均の EBITDA で見る債務償還年数」の式でもあわせて確かめられます。

経営企画なら、自社の Z スコアの推移を競合と並べて財務の健全さを説明する材料に、投資家なら、割安に見える会社の中から財務が悪化し続けている会社を外すふるいに使えます。

注意点

  • 元の係数は、1960年代の米国の製造業のデータから作られたもの。日本の会社や製造業以外の業種には、そのまま当てはまらない
  • 点数の水準は業種によって大きく違う。同じ業種の中で比べるか、同じ会社の推移で見る
  • 銀行・証券・保険は、貸借対照表の形が違うので使えない
  • Z スコアは倒産を予言するものではない。あくまで、詳しく確かめる会社を選ぶための目安

企業データラボなら、取引先の Z スコアの推移を一覧で追いかけられます

企業データラボでは、Z スコアの式を一度作れば、約3,700社に同じ定義で当てはまり、決算のたびに計算し直されます。過去の期の値を「[2]」で参照できるので、2期前からの変化も式1行で済みます。

取引先を一覧にして、Z スコアの低い会社や2期前から下がった会社で並べ替えれば、どこから確かめるべきかがすぐに分かります。

取引先の Z スコアと2期前からの変化を、一覧で確かめてみませんか。与信の管理の下調べにお使いいただけます。

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