
増分 ROIC と再投資率:成長に使ったお金がどれだけ利益を生んだかを測る
企業データラボ
ROIC が高い会社でも、新しく投じた資本が利益を生んでいるとは限りません。3年間で増えた投下資本と増えた利益から増分 ROIC を計算し、再投資率と組み合わせて成長の持続力を測る方法を解説します。
ROIC が高いその会社、最近の投資も利益を生んでいますか
- ここ数年で新しく投じた資本は、どれだけ新しい利益を生んだのか
- 稼いだ利益のうち、どれだけを次の成長に回しているのか
- 外部からお金を集めずに、利益をどこまで伸ばせそうか
- 中期経営計画の利益の目標は、今の投資の効率で届く水準か
ROIC(投下資本利益率)は、事業に投じた資本でどれだけ利益を上げているかを表します。ただし、ROIC はこれまでに投じた資本すべての平均です。昔の投資が高い利益を生んでいても、最近の投資がうまくいっていなければ、ROIC は少しずつ下がっていきます。
最近の投資の効率を知るには、数年前の投下資本と今の投下資本、数年前の利益と今の利益を並べて差を取る必要があります。4期前までの決算をさかのぼる計算を、競合や全上場企業で同じ定義のまま行うのは、手作業ではとても追いつきません。
増分 ROIC と再投資率の式で、成長の持続力を測れます
これからの成長を見るうえで大事なのは、「新しく投じたお金が、どれだけ新しい利益を生んだか」です。それを表すのが増分 ROIC です。稼いだ利益のうちどれだけを再投資したかを表す再投資率と組み合わせると、成長の持続力が数字で見えてきます。
投下資本をそろえる
投下資本は、事業に使っている資本を、お金を出した側(借入と株主)から測ります。事業に使っていない手元の現金は差し引きます。「ROIC(投下資本利益率)の計算方法と ROE との違い」の記事では「有利子負債 + 自己資本」の基本の定義を紹介していますが、ここでは増えた資本が事業にどれだけ投じられたかを見たいので、事業に使っていない手元の現金を除いた定義にしています。
税引後の営業利益は、税率を約30%として営業利益に0.7を掛けています。実際の税率(法人税等 ÷ 税引前当期純利益)は年によって大きく動くため、比べるときは一定の税率で置く方が安定します。
増分 ROIC:3年で増えた利益 ÷ 3年で増えた資本
投資してから利益が出るまでには時間がかかるので、資本は1期ずらして比べます。今期までの3年で増えた利益を、1期前までの3年で増えた資本で割ります。
3年の増分投下資本は、1期前と4期前の投下資本の差です。増分 ROIC が ROIC を上回っていれば、新しい投資は既存の事業より効率よく稼いでいます。下回っていれば、成長のための投資の効率が落ちてきています。
再投資率:稼いだ利益のうち、どれだけ事業に戻したか
再投資は、設備投資から減価償却費を引いた「純粋な投資」と、運転資本の増加の合計です。これを税引後の営業利益で割ると、稼いだ利益のうちどれだけを次の成長に回したかが分かります。
設備投資は年によって大きく波があるので、1年の再投資率だけで判断せず、3年分を合計して比べると実態に近づきます。分子と分母をそれぞれ3期分の合計にした列も作っておくとよいでしょう。
M&A で成長している会社は、買収に使ったお金がこの式に入りません。その場合は、のれんの増加分(今期と1期前ののれんの差)を分子に足すと、実態に近づきます。
成長の持続力 = 再投資率 × ROIC
稼いだ利益のうち再投資に回した割合と、その資本で稼ぐ力を掛け合わせると、外部からお金を集めずに利益をどれだけ伸ばせるかの目安になります。
たとえば、利益の40%を再投資し、ROIC が15%の会社なら、内部成長力は年6%程度です。中期経営計画の利益の目標がこの水準を大きく上回るなら、追加の借入・増資・M&A のどれかが必要になる、という確かめ方ができます。
4つのタイプに分ける
- ROIC が高く再投資率も高い:稼いだお金を高い効率で再び投じる、複利で成長する会社
- ROIC が高く再投資率が低い:成長の機会が少ない。株主還元が増える余地がある(総還元性向とあわせて見る)
- ROIC が低く再投資率が高い:投資を続けているが効率が低い。増分 ROIC が改善しているかを確かめる
- ROIC も再投資率も低い:事業の見直しや資本の使い方の転換が課題
注意点
- 投下資本が小さい・マイナスの会社(現金の多い会社)は、ROIC が極端な値になる
- 3年の増分投下資本が小さい会社は、増分 ROIC の割り算が不安定になる
- 銀行・証券・保険は、借入が事業そのものなので、この考え方は当てはまらない
- リース負債を有利子負債に含めるかで、投下資本が変わる。比べる会社には同じ定義を当てはめる
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増分 ROIC や内部成長力で並べ替える、業種で絞って4つのタイプに分ける、自社と競合を並べる、といった使い方がその場でできます。中期経営計画で「投資の効率」を目標にするときの、競合とのベンチマークにも使えます。
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