
値上げを価格に転嫁できているか:売上総利益率の3〜5期の推移で確かめる
企業データラボ
原材料や人件費が上がる中で、値上げを売上に転嫁できているかを、売上総利益率の推移と、売上と売上原価の伸びの差から測る式を紹介します。5期の最低からの回復と、販管費まで含めた転嫁の度合いも解説します。
コストが上がる中で、この会社は値上げを価格に転嫁できているのか?競合と比べてみたくありませんか
- 原材料や人件費の上昇分を、販売の価格に上乗せできているのか
- 金額では転嫁できていても、利益率まで保てているのか
- 一度落ちた利益率は、値上げで戻ってきているのか
- 同じ原材料を使う競合と比べて、値上げは進んでいるのか
原材料やエネルギー、人件費が上がる局面では、そのコストの増加を販売の価格に上乗せできるかどうかで、会社の利益は大きく変わります。価格に転嫁できる会社は、ブランドや技術、取引先との関係で強い立場にある会社です。
ただ、値上げはコストが上がってから少し遅れて行われるのが普通です。コストの上昇が始まった年には利益率が一度下がり、値上げが浸透するにつれて戻っていきます。1年だけでは、まだ転嫁が追いついていないのか、転嫁できない会社なのかを区別できず、3〜5期分の損益計算書を会社ごとに並べる手間がかかります。
売上総利益率の推移と、売上・原価の伸びの差で、その疑問に答えられます
見るのは、売上総利益率の3〜5期の推移と、売上と売上原価の伸び方の差です。あわせて、金額で転嫁できたかと、率まで保てたかを分けて確かめます。
ステップ1:売上総利益率の推移
3年で売上総利益率が何ポイント変わったかです。コストが上がった時期でもプラスなら、転嫁ができているどころか、価格の決定力が強まっていると読めます。
ステップ2:売上と売上原価の伸びの差
売上の伸び率から、売上原価の伸び率を引いたものです。プラスなら、コストの増え方以上の割合で売上を増やせています。この値は、売上総利益率の変化と同じ向き(プラスなら粗利率は上がる)になります。つまり「率を保てたか」を見る物差しです。
「金額での転嫁」と「率の維持」は別のもの
コストの増加分をそのまま金額で価格に上乗せした(全額転嫁した)場合でも、売上総利益率は下がります。たとえば売上100・原価70の会社で原価が10増え、売上も10増やせば、粗利は30のままですが、粗利率は30%から約27%に下がります。そのため「粗利率が下がった=転嫁できていない」とは限りません。金額で転嫁できたかは、粗利の額の増え方で見ます。
3年で増えた売上原価のうち、何%を売上の増加で取り戻せたかです。100%以上なら、コストの増加を金額では全額転嫁できています(粗利の額が減っていない)。100%以上で、しかも「転嫁の度合い」がプラスなら、率まで保てている強い転嫁です。売上原価が3年で増えていない会社では、この率は意味を持ちません。
ステップ3:いちばん悪い年からの回復
5期の中で売上総利益率がいちばん低かった年から、今期までに何ポイント戻ったかです。コストの上昇で一度落ち込んでから、値上げで戻した会社を見つけられます。
ステップ4:販管費まで含めて見る
人件費や物流費の上昇は、売上原価だけでなく販売費及び一般管理費にも表れます。営業利益率でも同じ式を作ると、会社全体として転嫁できているかが分かります。
計算例
3年で売上高が1,000億円から1,150億円に(15%増)、売上原価が700億円から780億円に(約11.4%増)増えた会社では、転嫁の度合いは約3.6ポイントです。売上総利益率は30%から約32.2%に上がっており、コストの上昇以上に価格を上げられていることが分かります。
読み方と使い方
- 金額での転嫁率が100%以上で、粗利率も改善:価格の決定力が強い
- 金額での転嫁率は100%以上だが、粗利率は少し下がった:金額では転嫁できているが、率までは保てていない
- 粗利率が一度下がり、最低からの回復が大きい:遅れながらも転嫁できている
- 金額での転嫁率が100%を下回る:コストの増加を吸収しきれず、粗利の額も減っている
- 販管費まで含めた営業利益率の差の中身は「営業利益率の差の要因分析:原価率と販管費率に分けて3期の推移で競合と比べる」で分解できる
- 経営企画:同じ原材料を使う競合と並べ、自社の値上げの進み具合を確かめる
注意点
- 売上の増加には、価格の上昇と数量の増加の両方が含まれる。決算書だけでは分けられないので、決算説明の資料もあわせて確かめる
- 扱う商品の構成が変わると、価格の転嫁と関係なく粗利率が動く
- 会計基準の変更(収益認識の基準など)で、売上高と売上原価の範囲が変わった年がある
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同じ原材料を使う競合を選んで並べれば、自社の値上げの進み具合を同じ定義で確かめられます。
売上総利益率の3〜5期の推移と、売上・原価の伸びの差を、競合を選ぶだけで同じ定義で並べられます。
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