
業績予想の達成率で会社予想の「癖」を測る:保守的な会社・強気な会社の見分け方
企業データラボ
会社が期初に出した業績予想と実績を比べ、達成率の3期・5期の中央値で予想の癖を数字にする式を紹介します。上回りやすい会社・下回りやすい会社の見分け方と、癖を補正した予想利益・予想 PER の読み方まで解説します。
その会社の業績予想、どこまで信じてよいでしょうか
- この会社は毎年、控えめな予想を出して上回っているのか
- 強気の予想を出して、下方修正を繰り返していないか
- 今出ている来期予想は、その会社の癖を考えると実際はどのくらいになりそうか
- 自社の予想の出し方は、競合と比べて市場からどう見えているか
決算短信には、会社が自ら出す来期の業績予想が載っています。ところが、この予想には会社ごとの「癖」があります。毎年控えめな予想を出して上回る会社もあれば、強気の予想を出して下方修正を繰り返す会社もあります。
癖を知るには、過去の期初の予想と実績を何年分も並べて比べる必要があります。1社なら過去の決算短信をさかのぼれば済みますが、全上場企業で同じことをするのは手作業では無理です。しかも1年だけの比較では、景気や為替の動きによる偶然と、その会社の癖とを区別できません。
達成率の中央値を出す式で、予想の癖を数字にできます
過去の予想と実績を比べる「達成率」を複数年分出し、その中央値を取れば、その会社の予想の癖が数字になります。癖が分かれば、今出ている来期予想を「その会社なら実際はこのくらい」と読み替えられます。
考え方:前の期に出た「来期予想」と今期の実績を比べる
企業データラボの財務データでは、各期に「営業利益_予想_翌事業年度期末」(その期の決算のときに出した、翌期の営業利益の予想)が入っています。1期前のこの値は、今期についての期初の予想です。これと今期の実績を比べれば、期初の予想に対してどれだけ達成したかが分かります。なお、データの「翌事業年度」は決算発表の時点から見た次の期のことで、一般には「今期予想」と呼ばれるものです。
100%を超えれば予想を上回った、下回れば届かなかったことを表します。期の途中で予想を修正していても、比べるのは期初の予想です。投資家や取引先が最初に目にする数字に対して、会社がどれだけ正直だったかを測れます。
1年では偶然、3年で癖になる
1年だけの達成率は、景気や為替の動きで大きくぶれます。3期分を並べ、その中央値を取ると、たまたまの年に引きずられにくい「その会社の癖」が見えてきます。
同じ形で5期分に広げると、より長い目で見た癖が分かります。3期と5期の中央値が大きく違う会社は、最近になって予想の出し方が変わった(経営者が代わった、など)可能性があります。
平均ではなく中央値にしているのは、大きな災害や一時的な損失があった1年に結果が振り回されないようにするためです。中央値が105%を超える会社は「控えめに予想する会社」、95%を下回る会社は「強気に予想する会社」と見なせます。
予想が小さい会社は「売上高比」で見る
予想の営業利益がとても小さい、あるいはマイナスの会社では、達成率の割り算が極端な値になります(予想1億円に対して実績3億円なら300%)。そのような会社も比べられるよう、差を売上高で割った「ぶれ」も作っておきます。
売上高に対して何%分、予想より多く(少なく)稼いだかを表します。予想が赤字の会社でも、規模の違う会社どうしでも、同じ物差しで並べられます。
売上と利益のどちらで外れているか
売上高の予想にも同じ式を当てはめると、外れ方の中身が分かります。
- 売上はほぼ予想どおり、利益だけ上振れ:費用を多めに見積もる、保守的な予想の出し方
- 売上も利益も上振れ:需要を控えめに見ている。事業環境の追い風を予想に入れていない
- 売上が届かず、利益はさらに大きく届かない:固定費が重く、売上の不足がそのまま利益を削る体質
癖を補正した来期の利益の目安
最後に、今出ている来期予想に、その会社の達成率の中央値を掛けます。
たとえば、今期出した来期予想が120億円で、過去3年の達成率の中央値が108%の会社なら、補正後は約130億円です。会社の予想どおりなら伸びは小さく見えても、補正後で見ると大きく伸びる会社が見つかることがあります。
癖を補正した予想 PER
同じ考え方を純利益に当てはめると、癖を補正した予想 PER が出せます。時価総額と比べる利益は、親会社株主に帰属する当期純利益にそろえます(会社の予想の当期純利益も、この利益についての予想です)。
読み方には注意が必要です。補正後の予想 PER が今の PER より低いのは、「利益が伸びる見込みが大きい」ことを表すだけで、割安かどうかは分かりません。割安かどうかは、同じ業種の会社の補正後の予想 PER と並べたり、その会社の過去の PER の水準と比べたりして、初めて判断できます。一覧を業種で絞ってから補正後の予想 PER で並べ替えると、業種の中で利益の見込みの割に安い会社が上に来ます。
使い方の例
- 機関投資家:「補正後の来期の伸び」で並べ、市場の予想がまだ追いついていない会社を探す
- 機関投資家:業種で絞った一覧で補正後の予想 PER を並べ、同業の中で利益の見込みの割に安い会社を探す
- 経営企画:自社と競合の達成率を並べ、自社の予想の出し方が市場からどう見えているかを確かめる
- IR:予想を下回る年が続いている場合、予想の前提の置き方を見直すきっかけにする
- 期の途中の業績予想の修正は、「適時開示を競合分析に活かす:1年17万件の傾向と、株価と重ねて読む方法」で紹介した適時開示で追える
注意点
- 予想を出していない会社・幅で出している会社は、予想の値が無いため空欄になる
- 決算期を変えた年や、大きな M&A をした年は、予想と実績の範囲が違うことがある
- 会社の予想の癖は、経営者が変わると変わることがある。直近の年の達成率も合わせて見る
企業データラボなら、全上場企業の予想の癖を一度に比べられます
企業データラボでは、過去の期の会社予想と実績が同じ表に入っているので、「[N]」で前の期の予想を参照する式を1つ作れば、約3,700社の達成率と3期・5期の中央値が一度に並びます。決算が出るたびに、達成率と補正後の予想も自動で計算し直されます。
補正後の来期の伸びで並べ替える、業種で絞って補正後の予想 PER を比べる、自社と競合の達成率を並べる、といった使い方がその場でできます。
過去の期の会社予想と実績が同じ表に入っているので、達成率の3期・5期の中央値を全上場企業で一度に計算できます。
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